dawn
「ロッド、ちょっと来てくれるか」
だらだらとパソコンに向かい大嫌いなデスクワークを進める俺にツォンさんが声をかけた
デスクワークに飽き飽きしてた俺は外任務が貰えるのだと
普段は地獄からの呼び出しかと思えるツォンさんの声がこの時ばかりは神様のお告げの様
体を動かしてる方が性に合ってる俺にはこのひたすら椅子に座っての作業は苦痛以外の何者でもなく、
こういうのは凝り性というかマメというか、とにかく優等生やルードに任せた方がいいと思う
こんなにいい天気の日に俺が、篭もってるなんて、有り得ない
「ハイ!」
心なしか返事もいつもより元気にもなってしまう
気持ち悪いほどの笑顔を貼り付けて光速で近付いたらツォンさんは眉間に皺を寄せた
「ロッド、そんなにデスクワークが好きならこの仕事は他の奴に任せようか」
「え、ちょ、そんな、」
折角の脱出のチャンスを自分で潰してしまった!
こんなに爽やかな天気にこんなしなびた本部で一日過ごすのか・・!
「冗談だ、そんなにあからさまに嬉しそうな顔をされるとつい、な」
「あ、あ・・・なんだ。ツォンさん顔が悪いですよ」
「ロッド、喧嘩を売ってるのか?其れを言うなら人だろう。まぁいい、お前今日の夜、出れるか?」
「はぁ、まぁ、いいですけど、何があるんすか」
「社長の誕生パーティーがあるんだ。警備を頼む
本当は私が出るはずだったんだが、どうしても行けなくてな」
「・・・・・・・」
「ロッド?」
「・・・・あ、リョウカイ」
急に黙り込んでしまった俺を心配そうな声音でツォンさんが呼ぶ
ハ、として取り繕うように何時も通りの返事を返したものの、矢張りツォンさんの表情は変らず
居た堪れなくなって今度は先まであんなに嫌だった自分のデスクに急いで戻った
結局、こんないい天気なのに俺はこのしなびた本部で過ごす羽目になったのだが
鬱々とした気分になった俺にはこの方が良かったと思う
なんともご都合主義
誕生日、なんてそんな風に祝ってもらった事なんて無くて
実際、俺は自分の誕生日をはっきりと知らないし、
そんな奴は俺の周りにごまんといたから気にもならなかった
別に同情とかはいらないけど、こんなにも盛大に祝われる社長の誕生日、というものが無性に腹立たしかった
まるで誕生日を知らない俺は生まれてきた事を祝福されていないのだと暗に言われてる様で
了解、と伝えたものの夜が来るのが酷く嫌だ
夜につれて街が静かになって行くのと比例して俺の気持ちも落ちていく
誰が誕生日を祝おうなんて考えたんだろう
ああ、たるい
「ロッドくーーーん」
「ぐぇっ・・・」
後ろから突然ガッ、と首を締められて蛙みたいな変な声を出してしまう
振り返れば予想通りなのだが、あまり会いたくない彼が、居た
「レ・・・レノ」
「随分、ご機嫌ナナメですねー、ロッド」
「別にかわんねぇよ」
ほら、だからレノは嫌なんだ
そんなに見てないようで、ちゃんと見てる
鋭いから、隠し事なんてそうそう出来ない
「へぇ、ま、これからの警備、俺も一緒だかんな、と」
「・・・・・最悪」
ポツリ、と小さく呟いたつもりなのにレノにはしっかり聞き取れたらしく
くるり、と振り返ってにっこり、と笑われた
怖い、怖すぎる
ハハハ、なんて俺も乾いた笑いで誤魔化してみる
「聞かなかった事にしてやるよ」
「アリガトウゴザイマース」
パーティー会場が開場時間になるとちらほらと着飾った男女がやって来る
此処は何かの授賞式かと思う程の煌びやかな雰囲気に警備として
ちゃんと仕事で参加している俺がなんだか居心地悪く感じる
あーあーだから金持ちって嫌だ
金をこんなトコで使うくらいならスラムの人間にほんの一部でも使ってやれって
誕生日、なんて知らないカワイソウな子供にこの大量に残る食事だけでも与えてやりゃいいんだ
俺とか、そう、俺とかに
あーあー、本当になんでこの仕事受けちゃったんだろう
後悔先に立たずって言うけれどこういう時に言うんだな
「ロッド、ぼーとしてるとオニーサン襲っちゃいそうでキケンー」
物凄く近くに気配を感じて顔を上げるとレノが俺の目の前に立っていて思わず声を上げる
なんとなく、あれ、じりじりと追い詰められてる気がするんだけど
レノの目も、なんとなくマジな感じがするんだけど気のせいかな、気のせいだろ
「れれれれれ、れの」
「んー?」
「あの、えー、大変近いと思うのですが」
「ナニ、ドキドキするって?」
「違う意味でドキドキしてます」
それに、気付けば周りに人がいない
パーティーは、もう始まっているようで会場の方から賑やかな声がする
異常な至近距離で見詰め合ったまま何も言わずにいると
レノが少し芝居がかった大袈裟な溜息をついて離れた
「お前さぁ、何がそんなに嫌なんだよ」
「な、何も」
「仕事も出来ない位なら帰れよ、と」
「・・・・わりぃ」
レノの言葉に反論なんて出来る筈もなく俯いてしまう
俺が子供みたいな嫉妬をしてるのも解ってて、
でもどんなに強がってみても、俺は羨ましいのだ
誕生日がある事が、祝われる人が、祝ってくれる人が居る事が
「レノは、自分の誕生日って知ってるか?
俺ね、自分の誕生日知らない。血液型も、ちゃんとした生まれも、何も」
すぐ目の前に居るであろうレノのスーツを掴んで引き止めた
「俺の仲間は、そんな奴ばっかだったから気にした事なんて無かったけど
こうして当たり前みたいに誕生日を祝われる人が、ずるい」
顔を上げる事が出来なくて、レノの表情はわからなかった
呆れてるかな、怒ってんのかな
それとも笑ってたり、すんのかな
ポン、と頭を軽く叩かれてぐしゃぐしゃと撫でられ髪の毛をボサボサにされる
「お前さぁ、誕生日なんざ、テキトーでいいんだよ」
「・・・はぁ?」
俺の想像を遥かに越えた素っ頓狂な事をレノが言うものだから、思わず顔を上げてしまった
そこには、まぁ予想通りのニヤニヤ顔があったのだけど
「お前の誕生日は俺に負けた日だ
そうしてお前は一年に一回俺への雪辱を新たにして
まぁ、また俺に負けて、毎年忘れられない日になるだろ」
「負けるの前提なのかよ」
「当然、と。それにお前俺に負けた日、覚えてるだろ」
勝ち誇ったようなレノに素直に「覚えてます」なんていうのが悔しくて
睨みつけてみたのだけど、これじゃあ覚えてますと認めたようなものだな、と反省
だって、忘れる訳無い
レノに負けた日っていうのは、つまり
神羅ビルに今思えば無謀にもバイクを盗みに行った日で
俺がレノと初めて会った日で
タークスになった日で
俺が生まれ変わった様な気さえしたあの日
「ふん、ま、レノが俺に負けて跪く姿を見てやるよ
そしたらホントにその日がレノ打倒記念日になるな」
「ハッ、俺は何回お前が俺の足蹴にされるか数えててやるよ」
今年は俺の誕生日がやって来る、らしい
今はドア一枚隔てた奥で行われている盛大なパーティーが羨ましくは思わなかった
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流星さまリク「お誕生日RR」だったのですが
見事にラブ要素が無い仕上がり。
もう、だれもあたしに甘いのを期待しないだろう!
誕生日ってフツーケーキとか出てくるよね
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