声が枯れるまで

次第に覚醒する思考に伴い、ロッドは瞳を薄っすらと開けた。
この部屋に運ばれる前にアバランチの兵に散々殴られた体には無数の痣がくっきりと残っているのがわかった。
ぎしぎしと音を立てる体は動かすのも億劫で、そのまま床に転がる。
冷たい床はロッドの体温を奪ってすっかり同じ温度になっていた。
その感触こそ違えど、人肌の温度と同じそれに甚く心が悲鳴を上げて恋しがるのを止める事は出来なかった。
眼から溢れ出す涙は頬を伝って床に零れとめどなく流れた。

「はっ・・・ぁ」

嗚咽を漏らしていると次第に呼吸が辛くなり仕方なく重い体を起こそうとする。
足を動かすとジャラ、と冷たく重い音が狭い部屋に響く、その音で漸く己の足に巻きつけられた頑丈な鎖に気付いた。
それはロッドに鎖をつけた本人の異常なまでの執着を端的に示していてその恐怖に背筋が凍った。

鎖は片足だけ巻かれており先には錘が付けられており動かす事も出来ない程重い。
腕に嵌められた手錠も力でどうこうできるものではない、
ロッドは諦めたように深い溜め息を零した。

そこにロッドが目覚めたのを見計らったのだろう、ドアが開いてフヒトが部屋に入って来た。
フヒトは床に転がるロッドの姿を確認すると、笑顔で近付いてゆく
ロッドは射殺さんばかりの視線で目の前の男を睨みつけた。
フヒトはロッドの視線など何も感じて無いかの様に歩調を変えることなく近付く。
それはロッドが睨む以外の抵抗を出来ない事を知っていて嘲笑うかのようで、悔しさでロッドははちきれそうだった。
フヒトはロッドの体を抱き上げようと背中へと腕を回す

「触んな・・・っ!!!」

ロッドが精一杯自由の利かない体を動かして拒否する。
その視線だけは未だフヒトを捉えたまま、で
フヒトは怒りでギラギラとするロッドの視線に嬉しそうに笑う。

「その目が好きですよ、ロッド」

フヒトは立ち上がると躊躇いも無くロッドの腹を蹴り上げた。

「かっ・・・・は」

「でも、嫌いです」

ロッドがその衝撃に思わず体を丸めるが、フヒトは容赦なくその体を蹴り続けた。
全身がジクジクと痛む、肋骨は何本か逝ったな、と朦朧とする意識の中思考する。

「ゲホッ・・・ッッは・・・・は」

咳き込んで瞳に涙が浮んだ。
フヒトにとって涙は最高の媚薬でしかない。
圧倒的不利なこの状況でさえ、ちっぽけなプライドが眼の前の男に縋る事を許さない。

「その目はどうしたら絶望に、怯えに染まるのですか?」

フヒトの腕がす、と伸ばされた、
殴られると思い、咄嗟に体が身構えた。
次に来るであろう衝撃を待っているとフヒトの腕は全く動いていなかった。
その指先は態度とは裏腹に意外にも繊細にロッドに触れた。
そのギャップにロッドは戸惑う、優しさは、痛かった。

「や・・・めろ・・っ、イヤだ!!」

一瞬でも恋しかった温度に気が緩んでしまいそうな自分が嫌でロッドはその指先から顔を背けた。
優しさは要らなかった。どんなに辛くても酷く扱われたほうが楽だった。
余計な事は考えたくないんだ、ただ被害者ヅラしてアンタを憎めればそれで善かったんだ。

所詮人は自分が可愛いエゴイスト。
いつだって被害者のほうが強い法治国家。
金さえあれば黒が白になる資本主義。

どうせ全部狂ってるんだ。

「ぐぅっ・・・」

また容赦ない蹴りが腹を襲った。
その衝撃でロッドは床へと倒れこむ。

「かっ・・は・・ぁ」

蒸せて苦しげに息をするロッドの頭を掴むとそのまま床に叩き付けた。
2、3度殴りつけ、思い切り床に叩きつけるとロッドは静かになり何の抵抗も見せなくなった。
軽い脳震盪を起こしているのだろう。完全に身体が停止している。
フヒトは大人しくなった体から衣服を無理矢理脱がせるとロッドの最奥に指を這わせた。
その身体がこれからされるであろう行為を感じ取りビクリ、と震えた。
フヒトはきつく閉じられたその入り口に無理矢理己自身を押し入れる。
途端、上がる悲鳴。

「う・・ああああああ!!」

ロッドは内側からの引き攣れる様な痛みに耐え切れず涙が出る。
普段ならば快楽を与えてくれるその行為は今は唯暴力と化してロッドを打ちのめした。
圧迫感で胃液が競り上がってくる様な感覚に襲われて気持ち悪さにただ叫び続ける。

助けろ、助けて、助けて、助けて
痛い痛い痛い痛い痛い痛い

フヒトのモノを食いちぎらんばかりにしめつけるソコがリアルにその存在を理解させて、
堪えきれない涙が落ちて、
心が、 震えた。


「レ・・・ノ・・・・レノッ!!」

助けて欲しくてただ愛する人の名前を呼んだ。
一気に怒りの表情へと変ったフヒトの拳が俺の頭を殴りつけた。
意識が飛びそうな程の痛みにそれでも飛ばせない、痛みに強い自分の体を少し恨めしく感じた。

「その名前を呼ばないで、下さい」

「レ・・・・ノォ・・・レノ!レノ!レノ!!!」

また顔目掛けて飛んでくるフヒトの拳を目で捉えながら、それでも愛する人の名前を叫んだ。

奇麗事だと知っていても
レノが俺の事を軽蔑したとしても、
心まで犯されたくなかった。

怒りと悲しみで俺は哭いた。

ロッドの瞳はこんな状況になってさえ、その燃える様な力を失わず輝く。
フヒトはその瞳に余計に己の加虐心が煽られるのを感じてク、と小さく笑いを零した。

―――大概にしてほしい、ロッドも、自分も

フヒトはそのままぎちぎちと狭いロッドの中に己を推し進める。
中が切れて、血が溢れてくると少し滑りが良くなって動きやすくなった。
繋がった箇所がグチュグチュと卑しい音をたてはじめる。
その音が堪えられない、とばかりにロッドは音を掻き消すように声を上げる。

「いた・・・ぃ、やめっ・・」

途切れ途切れに懇願するロッドの言葉に気分を良くして逃げようとする腰を抑え付けて一気に貫く。

「つぅ・・・・あ、あぁ」

痛みだけしか訴えなかった声に少し色が含まれ始めた。
背を反らせてビクビクと震える身体は普段のロッドからは想像も出来ないほど艶やかであった。

「ひ・・うぅ・・・あぁ・・・・あああぁ!」

喉から零れるのは嗚咽か嬌声か、もはやわからなかった。

「殺して・・・やる!フヒトッ・・・!!」

嗚咽と嬌声に交じって零れる不穏な言葉が心地好かった。
若しも、貴方が私を殺してくれたなら、

なんて素敵な幕引き(フィナーレ)でしょう。

「殺・・・してやる!殺してやる!」

もっともっと憎んで、叫んで、私の名を呼べばいい。

その、声が枯れるまで




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フヒトロッド。なにこれ!ちょう自己満足。自給自足。自家発電気味!!
ロッドがフヒト様に殺意と一緒に憐憫というか、多少の愛を持ってるといいと思う。
それは、レノロドの相互的な愛じゃなくて相対的、
つまり、レノロドが片方が死ぬなら共に死ねたらいいのに、的盲目愛だとしたら
フヒロドは、アンタを殺すのは俺だし、俺を殺すのはアンタ、的な退廃的愛。
だったらいいのに。やだ!カウィィ!

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