従属
つい先刻まで身体を酷使させられた事による疲労で炯は気付かぬ内に眠りについていた
フヒトが訪れてからどれ位経ったのか、それを推し量る術を持たない炯は呆然と床に転がる
(流石に、腹減ったな)
フヒトを挑発しようと意図して食事に手をつけなかったのが彼が最後にこの部屋に来た時であったから少なくとも1日は何も口にしていなかった。
(せめて、水だけでも置いてないかな)
不安定な体でのろのろと机に近付くがそこは綺麗に几帳面すぎるほど片付けられていた
もしかして、このまま俺殺されるのかな
脳裏に浮んだ考えが炯を慄かせた。
いっそ死んでしまいたい、そう思い、願ったのに死への恐怖は払拭出来なかった
少なくとも、あの男にこのまま飼い殺される事はプライドが許さなかった
仮令、体をどんなに陵辱されようと、心まで死ぬつもりは毛頭無い
かといってこのまま食事が与えられないとしたら確実に死へとリンクする
ドアの前で暴れたところでどうやらここは隔離された場所にあるようで声は届かない
「くそがっ・・・!!!」
吐き捨てるように言って炯は苛々の矛先を壁に向けた。
何故か拘束されていない両腕で渾身の力を込めて壁を殴りつける
悔恨や寂寥が思考を苛む。
「くそ、くそ、くそぉ!」
こんなにも己の非力さを悔やんだのはあの時以来だった
レノに負けた時の悔しさ、こんな時さえまたあの男が浮んでくる
もう声はおろか顔すら霧がかってしまったあの男が、悲しい
己の意思に反して人間とはこうして狂っていくのか、炯は叩き付けた拳をそのままにずるずると崩れていった
『ロック、カイジョ』
無機質な機械音が来訪者の存在をロッドに伝える
顔を向けることすら億劫でそのままの体勢で
目の前に姿を現した男を不本意ながら迎える
「おや、またホームシックですか」
業とらしい溜め息と軽蔑するような声が炯に浴びせられる
コイツは、本当に頭が良いのだと思う。
どうしたら人の神経を逆撫でるか、きっとそういう物を心得ている
それに乗せられるのも癪で目には目を 歯には歯を 皮肉には皮肉で、
「おかげさまで」
相変わらず俯いたままの炯を不快に感じたフヒトが後頭部を掴んだ。
「まだ立場を理解してないのですか?」
「はん、そんな事もまだわかんねぇのかよ?学者様はよ」
「・・・・意味を図りかねますが」
「ハナッからアンタに尻尾振るつもりなんかねぇんだよ」
後頭部を押さえつけている腕を掴んで無理矢理突き放す。
「アンタが嫌いだ、憎いし、殺したい」
真っ直ぐフヒトを睨みつけて炯は明確に言葉を発した。
フヒトは瞠目したように見えたがそれも一瞬の事ですぐに何時もの無表情を作った
「躾ないと、駄目なようですね」
だからこそ、あなたは面白い
眼鏡をつ、上げてフヒトは炯を容易に床に組み敷いた
ここに来て、もう5日経っていた
元より体格が良いとは言えない炯の体は痩せて、更に弱弱しく見せた
現に彼はもう、肉体、という面では自分に抵抗する力が無い事をこうして露呈している
「おや、随分な口を聞いた割に、随分素直ですね?
私を挑発して、酷くされる方がお好きですか?」
「てめえこそ優しくしようだなんて向いてねぇだろ、サド」
「私に触れられるのも嫌な癖に、抵抗もしないんですか?」
両腕は自由にしてさしあげたでしょう、と愉快そうに口許を吊り上げて言い放つ
「殴られてぇならいくらだって殴ってやるよ、変態」
「いいえ、抵抗されないと楽しくないもので」
この場には似つかわしく無い程楽しそうに笑ってフヒトが炯の首に手を回す
首を絞められると思い、その手を掴んだがそれは首を絞めるために力を入れるでもなく、すぐに離れた
「ああ、よくお似合いですね」
その首には、首輪が付けられていた
「さあ、私と遊びましょう、炯」
初めて、炯の絶望したような、悲しい顔を、見た
それは私がずっと望んだはずの、もの
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なんかだんだん矛盾してきた気が・・・
そろそろ話がすすむはず
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