HONEY HONEY
俺の名前は如月 炯(18)
神羅カンパニー総務部調査課に勤める特殊な会社員だ。
仕事柄、人との出会いは多いほうで、友達も多いと思う。
今日はその中で、特に仲がいい神羅兵について話そうと思う。
クラウド・ストライフ(15)
それが彼の名前だ。
金髪、碧眼、白い肌でチョコボ頭。まだ成長期なので背は低い。
一言で言えば、美少年。
普通の女なんかじゃ見劣りさせてしまうほどの外見とは裏腹に性格は負けず嫌いで生意気。
まあ、それはある意味一生懸命で凄く可愛いと思う。
ただ人間関係を作るのが苦手なようでついとんがった態度を取ってしまうようだ。
こう言うと、彼は女王様のように聞こえるが、
そんな彼にも唯一、勝てない恋人 がいる。
「クラウド!」
背後にぶつけられた大声量に俺とクラウドは同時に眼を遣った。
そこにはクラウドより遥かに、俺よりは大分、背の高い男が立っていた。
クラウドとは対照的な漆黒の髪。
よく通る明るい声、
嫌味の無い笑顔、
無駄なくついた筋肉が男らしくて
『理想の男』を再現したようなこの男こそが、
彼の、恋人
「ザックス」
そして俺にとっての敵である。
ザックスも特に仲がいいと思ってる友達の一人だけど
クラウドが関わっているときは、別だ。
俺と仲良くなってからクラウドは一日一回は、こうして俺のところへやってくる。
任務で会えない時以外は、ほぼ、毎日。
俺はクラウドの事を恋愛として好きだと思ってるわけではないが、
友達が悲しんでるのを見るのは凄くイヤな気分にさせられるのだ。
それが、大好きな友達であるなら尚更。
かといってザックスも態とクラウドを泣かせてる訳じゃない。
そんな事は解ってる
今日だって、クラウドは「ケンカした」と言って俺のところに来たのだ。
怒ってたり、泣いてたり、理由も色々だけど、クダラナイ事も多いし
すれ違いとか、ザックスがいつもクラウドの傍に居れないのも、
ザックスがソルジャー1stという稀な立場に居る事を考えれば、仕方が無いのだけど。
クラウドを泣かせた以上は、全部ザックスが悪い事になっている。
少なくとも、俺の中では。
「ごめん!クラウド!」
「・・・・・・・・・・・・」
不機嫌な時のクラウドはだんまりで何も答えない。
「社長から無理矢理仕事入れられたんだ、ホントに!」
「いいよ、別に」
こうやって投げやりな言い方をする時のクラウドが、
本当に怒ってる時以外にしないのを知っているのだろう、ザックスも困りきった表情をする。
「お昼過ぎには、戻れるから!それからでも行こう」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ザックスの話を聞く限りでは、きっと今日はオフで何処かに出かけるつもりだったのだろう。
それが急な任務を入れられたザックスが行けなくなってしまった、と。
クラウドが相当怒っている事からも、きっとすごく楽しみにしていたのだろう。
俺もザックスが言うように、昼からでも楽しめよ、とかフォローを入れようとしたのだが
思いの外険悪なクラウドのオーラにそんな事を言えるわけも無く、三人とも無言のまま嫌な空気が流れた。
「邪魔するぞ、と」
特徴的な口調がして、ザックスの後ろから赤毛の青年が姿を現した。
突如現れた第三者に視線が集中する。
「レノ。」
「んだ、炯までいんのかよ、揃いも揃って何してんだ、と」
レノは呆れともつかぬ表情で一人ごちて、俺たち三人を見回す。
そして「へー」と納得したように声を上げて楽しそうに口の端を吊り上げた。
「痴話喧嘩中悪いけど、ザックス任務に連れてくぞ、と」
レノは二人の険悪な雰囲気を察していながら物ともせず、言い放った。
「・・・・・・・はい」
クラウドは少し躊躇いを見せて、伐が悪そうに言った。
「クラウド、後で連絡する!」
最後に振り向き様にザックスがクラウドに呼びかけ、二人は走去ってしまった。
その背中を見つめるクラウドが何か堪えるように伏目するのが、捨てられた子猫のようで。
(アイツラゆるさねぇ!)
心の中で既に去ってしまった二人に宣戦布告する。
俺は、こんな時クラウドがホントに好きだなぁと思う。
繊細で、傷付きやすいから上手く振る舞えなくて、周りに冷たく思われるけど、
本当は誰よりも優しくて、正直で可愛い事を知ってる。
まるで大事な弟が出来たみたいな気がして俺は嬉しかったのだ。
だからこそ、余計に
(胸クソわりぃい!)
とにかく、いつまでもこんな所に居てもしょうがない、
「クラウド、今から空いてる!?」
「え!」
突然大声を出した俺に驚いたクラウドが肩をびくつかせた。
「俺、今から昼飯なんだけど、一緒に食いに行こう?
なんかビルの近くにカフェできたらしいけど俺一人じゃ、入りにくいし!」
いつもより早口で捲くし立てると、クラウドがくす、と笑った。
多分、俺の真意に気付いているだろうけど、クラウドは柔らかく笑っただけで、
「うん、行こう」
と、言った。
「おう!行こうぜ」
俺たちは素早く武器などを仕舞い、その場を後にした。
神羅ビルの近くに開店したカフェは、造りも綺麗で、人で賑わっていた。
雰囲気も女の人だけでなく、男でも入りやすいのが好感を持たせた。
俺たちはちょうど良く空いていた窓側の席に座った。
「スゲ、うまそう」
「へぇー、すごい」
カウンターから厨房の様子が見え、実物を見ながら選ぶ事が出来るのでとても面白かった。
ブッフェ形式のオードブルやサラダも充実していてつい欲張ってたくさん持っていってしまう。
任務の事とか、ソルジャーとか、そんな話をしながら食事をする。
「おいしかったー!満腹」
「ね」
クラウドはそう言いつつもなんとも言えない笑顔を浮かべた。
眼がちらちらと携帯の着信を確認する姿が目についた。
そんなクラウドの様子に俺は気付かれない程度に溜め息を零してしまう。
元気に出来るとは思わなかったけど、
気休めにもならないなんて
「ザックスから、連絡来たか?」
「・・・・えっ?」
携帯開きっぱなしにして横目で確認してるのに、俺が気付かないと思ったのか
クラウドが申し訳なさそうに携帯を閉じた。
「あの、今日・・ケンカしてただろ?
ザックスが任務入れられたのだって、しょうがないって分かってるのに、困らせて。
俺・・・・・・・」
「クラウドの所為じゃない」
そう、俺だってザックスが普通のソルジャーより余程忙しい事も知ってる。
その優秀さ故に社長から特別に呼ばれるのも知ってる。
だから、クラウドが怒るくらい、しても当然だ。
「ちゃんと謝って、今日出かけたいのに・・・・どうしよ」
クラウドの小さな体が更に縮こまって項垂れてしまったのに、
俺はどう声を掛けていいものかさっぱりわからなくて、頭をポンポンと叩いた。
彼に、勝てない。
良い友達じゃ、泣かす悪い恋人に敵わない。
どんなに美味しい食事も、楽しい場所でも
クラウドにとっては彼がいないと、意味がない。
俺じゃ、駄目なんだ
「クラウド、ちょっと待ってろ」
「うん」
俺は席を立つと、クラウドの眼に入らない場所へと移動し、携帯を開いた。
「だー、悔しい」
メモリから呼び出して、電話をかける。
「pppp・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
彼はクラウドを泣かすし、怒らせる。
そして
彼はクラウドを喜ばせ、笑わせる。
それは
彼
にしか出来ないのだ
「オイオイ」
一向に繋がらない携帯にイライラする。
戦闘中とかってんならしょうがないけど、こういう時に繋がらないのでは困ったものだ。
頭を抱えてどうしようかと唸っていると、フ、と頭によぎった男
燃える様な赤髪のタークス
バッと携帯を開いて電話をかける。
『レノです、と』
「レノ、わりぃ、ザックスに替わって」
『・・・・・どうしてかな、と』
「後で、はなす」
『ハイ、炯?』
「ザックス、仕事終わるか?」
『今終わったぜ』
「じゃあ、すぐこっち来れないか?
クラウド、いるから・・・・・・よろしく」
『マジ?・・・炯悪かったな』
「気にすんな、場所は・・・
思ったより遠くの任務に出ていたわけで無かった様で、ほっとして電話を切った。
俺はクラウドの所に戻る。
また少し話をしながら窓から外を見ていると、遠くにそれらしい人影が見えて俺は席を立った。
「クラウド、もう少しここにいてな」
「ちょ・・・!炯?」
慌てるクラウドを他所に俺は二人分の会計を済ませて出口に向かう。
と、ドアが開いてザックスが店に入って来た。
すれ違い様にハイタッチを交わす。
「炯、今度お礼するからな!」
「早くいってやれって」
少し悔しい気持ちで、曖昧に笑ってしまう。
きっと、今頃クラウドはどうしていいか分からず、
嬉しくて嬉しくて、「なんで居るんだ!?」とか言っているのだろう。
(しょうがない、か)
諦めにも似た、敗北感に打ちのめされながら、俺は店を後にした。
ドアを出たそこには赤髪の彼が思いがけず立っていた。
「レノ!」
片手をあげて「よぉ」とレノが言う。
「なんでいるんだ?」
「お前が俺の携帯にかけたからだろ、と
俺が場所割り出して連れてきたんだ」
ザックスが場所がよくわかんねぇて言うからな、とレノは付け足した。
「あちぃんだよ・・」
レノが呟くように漏らした。
どうやら、ザックスと一緒にレノも走ってきたらしい。
ザックスは自分の恋人の為に猛然と走ってるが、レノにしてみれば迷惑な話だ。
「サンキューな、おつかれ」
「・・・なんか、お礼してもらいたいですね、と」
レノの言葉に内心、ぎゃ、と思い後ずさる。
「俺じゃなくてザックスに言えよ!」
内心ビクビクな俺は何とか危機を脱しようとザックスを生贄にするが、
この男がそんなあっさり釣られてくれる訳もなく
「お前が電話しなきゃこんな事に巻き込まれなかった、と」
物凄く人の悪い笑みのレノが、ちょっと怖い。
「わー!俺がお礼すればいいんだろ!」
半ばヤケになって承諾の意を伝えると、レノは俺の腕を掴んだ。
「じゃあ、お礼に今から俺に付き合えよ、と」
「はぁ?どこに」
「デートしようぜ」
その言葉に思わず眉を顰めて「何言ってるんだコイツ」と言わんばかりの視線を浴びせてしまう。
俺は、レノが俺に興味を持つような事を、しただろうか。
この男の場合、単純に遊ぶ相手が欲しいだけかもしれないが
「炯 行くぞ、と」
「・・・ああ」
よく分からないままレノに連れられて、昼夜問わずネオンに飾られた街に繰り出す。
掴まれたままの腕を解こうとした時、グイ、と引っ張られ姿勢を崩す。
「好きな人の為に頑張るお前が可愛いと思った」
引き寄せられて囁かれた耳が火傷したみたいにジンジンとした。
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役得は、レノですね。
ザックスはクラウドの為ならほんとに何でもやる男だと思います。
そしてロドクラはとにかくイチャイッチャ可愛ければいい
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