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日の長い夏の日とはいえ、宵も深まった頃に家路についている
つい先程まで一緒だった男も家路についているだろう
なんてステキな日なのだろう、今日は



「仕事帰りにザックスに会うなんて、初めて」
「当たり前だろ!俺、今日は急いで終わらしたんだぜ!」
「なんで?」
「なんでじゃねぇだろ、お前の!」
「は?俺の?」
「誕生日だから、せめて奢ってやるくらいしようと思って」

どうせいつもの店だけど、といってザックスは少し恥ずかしそうに笑うのだけど

「いいよ、奢りなんて。アンタと食べるだけで十分」
「それじゃ俺の気持ちの行き場がないんだって!」
「十分なんだって、もう貰った」

俺が笑って答えれば、ザックスは開きかけた口を閉じて困りきった顔をしてしまう

「でも、クラウド・・・」
「誕生日って俺がアンタに感謝する日なんだよ
こうして一年間また無事に過ごせた事を、アンタと居れる事を」

ザックスは一瞬嬉しそうな顔をし、その一秒後には慌てはじめる
忙しない、だから、彼なのだけど

「でも、奢らせてくれないと俺が落ち着かないんだって!」
「ザックス、しつこい。そんなに言うならバカ高いプレゼント強請る」
「えっ、いくら?」

「一年後もまた無事でいて」

「当たり前だ!
クラウド、おめでとう」

結局、飯屋に連れてかれてコイツは奢ったのだが
(だってレジにいつの間にか走っていってしまったのだもの!)
俺がこっそりポケットに返したお金に気付いて頭を抱えるアンタを想像して笑いを堪えられそうにもなかった

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