1+1=


誰でも出来る簡単な足し算
答えは2に決まってると皆口を揃えて言うだろう
だからこそ、改めて大事な場面でこんな質問をされると戸惑う

そう、例えばこんな話がある
秘書を選ぶテストである社長が出した問題は
1+1=?
最初の賢そうな女性は2と答えた
次の思慮深い女性は11と答えた
最期の金髪の女性はわからないと答えた

結局、採用されたのは金髪の女性だった

誰もが知っている様で答えは1つしかない筈の事が
こうしてみるとまるで幾つもあるように思える

「クラウド、ごめん、俺頭痛い」
「ちょっと、ロッドが教えろって言った癖に!」
「だって、俺、勉強なんてした事ねぇもん!」

フー!と尻尾を逆立てた猫が、二匹
机に頬杖をついてぼんやりとそれを見つめるザックスにはそう見えた

「だから1から説明してるだろ!」
「でも俺にはその1もわかんねぇんだから0から教えろよ!」
「う、・・・解ったよ」

相手が半端無く頭がアレ、なロッドを相手に勉強を教えようという方が無謀にも思える事だが
互いに切れながらも結構楽しそうなのでまぁ、暫くは付き合ってやろうと思いこうして暇をしてる訳なのだが、
このままでは日が暮れるどころじゃなくあと何日かかるか解らない
(いい加減飽きてきたなー、ていうか俺放置されてるし)
余りに暇なので手慰みに作っていた鶴がもう20匹になってしまった
気分転換に何か飲み物でも買ってこようかと思い、ザックスは席を立つ
椅子を引いたその音にクラウドが顔を向けてどうしたの?という様な視線を送る

「ちょっと、飲み物買い行くわ」
「あ、わかった」

ヒラヒラ、と手を振って背を向けるとその背からまた何やら叫び声がする
誰かあの子の頭をもっと早くに治してあげられなかったのでしょうか
神様ってイジワル
最早、神の所為にする他無い可哀想さに思わず宙に十字を切ってしまう

自販機が置いてある階は喫煙エリアとなっており
同じ様に休憩に来た社員で賑わっている事も多い
仕切られた部屋のその中へ足を踏み込むと最初に見えた
赤い髪の尻尾はよく知った人の物以外は見た事が無い
此処には、一匹。サボリ猫。

「おい、レノ」

その長い尻尾を引っ張るとレノは振り返って
素早く己の武器を抜くと俺の首元にその先を向けた
此方の猫はあちらの猫ほど温和では無いらしい
構ったつもりが爪を立てられてしまった

「おっと、危ないな」
「ザックス」
「あー、と わりぃわりぃ」

そんな事僅かにも思っていない声でザックスが言えば
レノはフン、と不満そうに鼻を鳴らして武器を仕舞った

「こんな所で煙草吹かしてていいのか?タークスのエースが」
「何か言ったかな、と
お前こそ何しに来たんだよ。ソルジャー1st様が」
「俺にだって休みはあるぜ?」

ていうか、ソレ、妬み?とからかってやればレノの蹴りが背中にクリーンヒットする
容赦の無い所がレノらしいと言えばそれまでなのだが、痛いものは痛い
その反動で思わず押してしまったらしい自販機が吐き出したのは
夏なのに、ホット。それも、おしるこ

「レノ!テメェ!120円返せ!」
「あぁ?しらねぇよ」
「嫌だ、ぜってぇ返せよ!
そもそもの原因はお前の飼い猫が馬鹿な所為なんだぞ」
「はぁ?何言ってんだよお前」
「だから、ロッド。アイツに今クラウドが勉強教えててさ」

其れを聞いたレノが一瞬瞠目した
そして、次に哀れんだ表情で俺を見て笑った

「無駄な事やってんだな、と。可哀想だから120円返してやるよ」
「え?無駄って」
「ロッドに勉強教えるなんざ、俺は勘弁だぞ、と」

神様、此処にあの少年を救うのを放棄した男が居たようです

「で、アイツ何教わってんの?」
「いや、なんか3+4が7にならないって」

ブッ、と思わず口に運んでいた缶コーヒーを吹き出したレノが
最初の自分とクラウドとほぼ同じ反応で親近感さえ覚える
そりゃそうだ、俺だって思わず涙が溢れるかと思った程だったのだから
ザックスは数時間前にそれを聞かされた時の事を思い出す

「いや、一応ロッドの名誉の為に言っておくと決して足し算が出来ない訳じゃない」
「流石に、俺様もアイツに勉強教えようかと思ったじゃねぇか」
「で、まぁ。話はこうだ
北に3m、次に東に4m進むとする
すると俺が進んだ距離は出発地点から現在位置で3+4=7mにはならない
直線距離で5mになる訳だ」
「なんだ、ベクトルか」
「そう、そうなんだけど、あの赤毛の猫にはそれがちっとも理解出来ないらしいぜ」
「で、お前の金色の猫はまだ諦めて無いのか?」
「あぁ、アイツもなんかもう意地になってるっていうか・・・」

思いがけずレノに出会った事ですっかり長居してしまったが、あれから結構な時間が経っていた
今戻ればもしかしたら、終わってるかも知れない
急いで待っている彼等の分の飲み物も買うとレノに声を掛ける

「レノも来るか?」
「そうだな、と」

飲み終えた缶を彼が投げると見事にゴミ箱に入る
おー、と歓声を上げるとレノがザックスの頭を叩く
そうしてさっさと歩みを進めるレノを追いかけて二人は猫二匹の元へと戻った


「おかえり」
「遅くなってわりぃ、飲み物買ってきたから」
「あ、有り難う。・・・て、アレ」

戻ってきたザックスの他にもう一人居る事に気付いたクラウドの隣で
机に向かって何やらガリガリと書いていたロッドが叫びながら顔を上げた
そして、同じくザックスの隣に立つ自分と同じ制服を着た青年に気付いた

「げぇ!」
「お勉強は進みましたかね、ロッド」
「うっせえなぁ!俺は今確実にいんてりげんちあへと近付いてるんだよ」
「お前インテリゲンチアの意味ちゃんと解ってないだろ」
「知ってるよ!ちゃんと俺頑張ってんだからな」
「あ、でも、ロッド、少しは解ってきたよね」

クラウドがフォローするもイマイチ誉められてはいないのだがロッドはそれで満足だったらしい

「だろぉ!クラウド、本当優しい」

どっかの尻尾つけた人と違ってー、と明らかにレノを見ながら漏らすロッドに
レノが黙っていられる訳が、無い

「ホント、よかったよなぁ。お前みたいな救い様の無い馬鹿に教えてくれる人が居て」

俺は絶対に御免だな、と加えてレノは先程間違えて買ったおしるこをロッドの前に置く
そして、本当はロッドの分として買ってきたスポーツドリンクを奪って口をつけた
レノ、流石に大人げ無いぜ、と心中呟きつつ止めない俺も中々悪人だなとザックスは思う

「うっぜー!レノ!大体お前何しに来たんだよ」
「お前、からかう以外無いだろ、と」

ケラケラと笑ってレノがもう空になった缶を机に置くと
それを見たロッドが信じられない、といった表情で缶を凝視する

「お前には無理だから、大人しくおしるこでも飲んでろって事だぞ、と」
「!・・レノなんか、レノなんか」

マズイ、このままだと多くの社員が休みに来ているリフレッシュルームで
血が流れるかもしれない、なんて妙に冷静に考えている自分が居て笑えてきてしまう

「嫌いだーー!今ここでぜってぇにぶちのめしてやる!」

予想通り、頭に血の昇ったロッドが武器を構えてレノに向かって行くが
これだけ感情的になっていれば、自然動きも荒くなるというもので、
動きを完全に見切っていたレノに腕を捉えられてしまい、悔しそうにロッドが唸る
そのままレノはロッドを引き寄せると耳元で何か囁き、直ぐに離れると腕を解放してやる

「此処じゃ迷惑になるだろ。本部で幾らでも相手になってやるよ、と」
「っ・・・!わかったよ」

心なしかロッドの耳が赤くなってる様に見えた
しかし其れをはっきりと確認する前に、
レノに言われるままロッドは本部へと走り去ってしまう
3+4の答えはもういいのだろうか
呆気に取られているクラウドが少し不憫で肩を叩いてやる
ロッドのインテリゲンチアへの道は、果てしなく遠そうだ

「じゃぁ、有り難うな、美人な猫さん」

レノが笑って、同じ様に踵を返して走り去る
その背中の尻尾がその楽しげな気持ちを表すように軽やかに揺れて

「なんか、当てられただけだよなぁ」
「でもさ、可愛いと、思わない?」

相手の気を引きたい一心で意地悪するなんて

「でも、レノの一人勝ちだけどな」
「何が?」
「んー、アイツロッドに耳打ちしてただろ」
「ザックス聞こえたの?」
「まぁ、人より耳いいしなぁ」
「何て言ってたの?」
「えー、あー・・・」

『お前は 俺 の、後輩なんだよ』

「ま、格好いい男の格好悪い嫉妬、て事かな」

意外に独占欲の強かったらしい親友を思い浮かべて苦笑いしているとクラウドが教えて欲しそうに見つめていた
身長差からどうしても上目遣いになるのが可愛くて、何となくぎゅうと抱きしめてしまう

「俺達も行きますか」
「え、ザックス、教えてってば!」
「そいや120円返して貰ってねぇな‥」
「何?」
「んーん、こっちの話」

彼等の恋路が見えてきて、只の先輩後輩で無くなるのもそう遠く無い話だろう
この答えは後どれくらいで出るだろうか
少なくとも、ロッドがインテリゲンチアになる日よりは遥かに早いと思う

彼的に計算すれば3+4の答えは5になってしまったけれど、
アンタ達の答えは一体に幾つになるのか
答えは一つじゃ無い

-----------------
らずさまキリリク
「ZC・RRなロドクラ仲良し話」だった筈なのですが
「ZC・RRなザクレノ仲良し話」になってるww
しかもツンデレノになったww
ちなみに金髪の女性は米では馬鹿というイメージがあるそうです

ベクトル、懐かしいですね(ニコ
あたしは嫌いでしたw

---------------------------
Designed by Web ×Web
---------------------------