夜に笑え


己に纏わり付く血の臭いとは別の咽返るほどに漂う生温かい空気にロッドは立ち止まった。
強烈な血の臭いに誘われるようにロッドはその扉をくぐった。


「っ!!」
目の前の光景に絶句した。
それはロッドが想像したものを遥かに超越した惨状だった。
5人ほどの死体が血をどくどくと流して一面赤に染め上げられている
後姿は幼い少女のように見える人らしき影がぽつん、と立っていた。
血の海の中で、ごく当たり前のように
「オイ!お前何してんだ!」
駆け寄ろうとした体は危険を察知して、踏み止まった。
尋常な人間とは思えない瞳にロッドは慄いて数歩後ろへ下がる。
ロッドの声に反応してゆっくりと振り返った少女は何の躊躇も見せずロッドに攻撃を放った。
何か細い管のようなものが体から飛び出して鞭の様に舞う。
「ち・・・、コレがモンスターか?」
「あなた、神羅でしょ?」
少女が表情を凍りつかせたまま尋ねた。
「連れ戻しに来たの?」
「殺しに来たんだ」
少女の顔が僅かに険しくなったように見えた。
「勝手にサンプルにして、その上勝手に殺すの?」
神羅が裏でモンスターを作っている事はしっていたが、目の前の少女を前にしてロッドは狼狽した。
幼い少女さえ、あの男はサンプルにしてしまうのか。
沸々と怒りが湧いてくるのを感じて眼の奥が熱くなった。
幾ら汚い仕事をしたとしても、こんなにも悲しいものを作り出したとしても
俺はタークスだから、任務は遂行しなくてはならないのだ。
「・・・・・・すまない」
ロッドはスピードを上げて一気に距離を詰め、痛みを感じないデスを放った。
確かに発動して、地面へと落ちる少女を眺めた。
バシャ、とその軽い体が血の上に落ち、その眼はロッドを見上げている。
虚ろに彷徨う瞳はもう力が残ってない事を如実に表していた。
「あたし、死ぬ?」
「ああ」
「もう実験されないのは、いいかも」
「・・・すまない」
「謝るの?」
「・・・・・」
「死ぬって寒いね」
「・・・・・すまな」
「滅んでしまえ、神羅」
一瞬、少女の眼に殺気が戻って無数の管が飛び出してきた。
マズイ、そう思ったが余りにも近すぎた距離に防御すら出来ずに全身に衝撃が走った。
「くそっ・・・!!!」
直に喰らった攻撃はダメージが酷く、全身から失われていく血に寒気すら覚える。
己のエゴが招いた慢心。少女に同情し仕留めなかった事。
ロッドは意識が朦朧とする中、血が失せて真っ白になった手で力なく携帯をコールした。


「ロッドか?」
「ごめ・・・・ミスっ・・・た」
「ロッド?」


(喪服の筈が、死装束になっちまったかな)
ロッドは遠退いていく意識の中、電話越しのレノが己の名を呼ぶ声だけ反芻していた

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魔法使ったら即死かなと思うのですが、お許しください。

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