tactics


「炯、ド派手なキスマークつけてよく歩けるね」
「へ?・・・うわぁ!」

いつの間にか隣に立っていた闇に炯は驚く。
任務を共にこなすようになって結構経つが、未だにこの男にだけは慣れない。
殺し屋ばりの足音の消し方はやめてくれ、そう胸中でぼやく。

「だから、キスマーク。そんな晒していいの?」

キスマーク、
闇に言われてばっと首筋を隠した。
指摘されて漸く昨日のものだとわかり羞恥で眩暈を起こしそうだった。
赤くなったり蒼くなってる炯をクス、と闇は笑う。

「噂、ホントなんだねー」
「噂って?」

嫌な予感がヒシヒシと感じられる。
炯はこのとき聞かなければよかったと心底思った。
闇独特の間延びした口調で告げられた死の宣告。

「昨日の夜炯と「ぎゃあああああ」

まさか外と隔離されているタークスにまで知れ渡ってると思っていなかった炯は取り乱して叫び声を上げた。

「ちょ・・闇。なんで知って」
「親切な受付のお姉さんが教えてくれた」

炯は朝、自分を強烈に見ていたあの視線を思い出した。
レノのファンだったんだろうな、今ならあの視線の意味が分かる。
はあああ、と深い溜め息を吐きその場にしゃがみ込んでしまった炯を闇がニコニコと眺めていた。

「ねぇ、付き合ってるの?」
「ちげぇよ、付き合ってない」

下から闇を睨みつけてしまう。
その言葉にどうしてイライラする必要があるのか。

「セフレ」

レノに告げられた関係。
別にそれが悲しいなんて思ってない。

「へー、炯がそんな器用なこと出来ると思ってなかった」

闇が面白そうに覗き込んだ。
「どうゆう意味だよ」
「ねえ、僕も炯のセフレにしてよ」

相も変わらず腹の内が読めない笑顔を貼り付けた闇。
ヤッパリ、コイツ苦手。

「コレ以上、面倒なのはいらねぇ」
「ちぇ、フラレた」

大して残念そうにも見えない顔の闇を一瞥して、炯は立ち上がった。

「じゃーな」

その背中を眺める闇が独り言。

「どっちもどっちだよねぇ」

結局、他の誰かに所有されるつもりもないんじゃないか

『セフレにしてよ』

闇の言葉が頭の中で反芻する。
どうして俺は断ったのか。レノじゃなきゃいけない訳?

そして、気付いてしまった。
闇にそう尋ねられて、断った自分と同じ理由でレノがキスマークをつける事。


考えるとき、炯はつい足が屋上へ向かってしまう。
70階建ての高層ビルの屋上は、圧巻としか言いようが無い絶景で、そこでボンヤリと思索するのが好きだった。
頬を撫でる風も炯を慰めてくれているかのように錯覚させるからだ。

「げ」

屋上への扉を開いた時、視界に入った赤色。
そこで思い出したのはレノも何か考えるときよく屋上に来てる、という事

「炯か、と」

こちらに気付いたレノが先に声をかけた。
いづれにせよ開けるも閉めるも出来なくなっていた炯はその声に導かれるように屋上へ降りた。

「レノも来てたのか」
「下にいるとうるせえからな、と」
「確かに。俺なんかさっき闇にセフレになってよって言われるし」

レノがちらりと炯を見遣った。

「へぇ、なんて答えたんだ?」
「面倒なのはいらねぇ、て」
「へぇ」

互いに押し黙ったまま、眼だけは逸らさないでいた。
雲が太陽に被さって真昼とは思えない暗さ。

「なぁ、レノはどう思う?」
「炯は何て言って欲しいのかな、と?」
「俺にもわかんねぇんだよなー」
「俺はどうでもいいぞ、と 楽に行こうぜ」
「楽に、ね」
「いいんじゃねぇの?セフレでも」
「そんな下品な関係が良く、似合うってね」

好きなときに犯って、
女みたいに気使わなくて良い、
特別な愛の言葉も必要ない、

一番都合の良い関係。

「好きだろ、と」

「・・・・さぁね」

不毛な質問繰り返してる。

「俺さ、レノがつけるキスマーク嫌い」
「へぇ・・・・」
「俺のこと捕まえるのも面倒で、でも他人に所有させたくもないって感じ?」

自分勝手なんだよ、アンタ

炯の唇がふ、とレノの唇を掠め取ったかと思うとすぐさま首筋にチリ、と痛みが走った。

「これで、おあいこ」
「こんなモンで俺様を縛れると思ってんなよ」

満足げに微笑したレノの指がそのキスマークをなぞるのは、

アンタの負けだろ

レノ

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結局、好きなんだろ?てハナシ。
まわりくどー、うぜえええ!
炯の性格が途中で変わったと思った人は鋭いです。
セフレでいいといいつつ互いに落とそうと頑張ってれば、いいよ。

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